田上病院耳より情報

2013年06月10日薬膳やくぜんを意識した春の食養生しょくようじょう〜栄養課〜

今日の食生活の中には、多種多様の食べ物があふれ過剰摂取や偏りが健康をおびやかす一方、健康に対する関心は高く、テレビや雑誌、新聞では食生活や栄養その他の情報があふれています。特別なことをせず普段の食事の中で『食物の力を借りて病気を未然に防ぐ』予防ができないかと医食同源、薬食同源の思想のもと『薬膳(=薬になる食膳)』を確立していったのが、中国の先人たちです。
『薬膳(=薬になる食膳)』は、草を楽しむ『薬』、人を良くする『食』、体に善いもの『膳』が含まれ食べ物の薬効を知りそれらを組み合わせ調理することで体の健康に役立てていこうとするものです。今回は薬膳にふれ、これから訪れる春を意識した薬膳・食養生について紹介します。

陰陽学説と生薬・食物の五性と証

中国の文化や文明を理解するにあたり必要なことは、中国の陰陽五行説の考え方について知る事であると言われています。
陰陽五行学説とは、陰陽学説と五行学説を合わせたものです。陰陽学説とは、自然界を陰と陽の二つの要素に単純化してとらえた自然観であると言われています。一例を挙げると次のようになります。

このように、万物の相反する「陰と陽」二つの要素は、様々な関係をもち作用し合ってバランスをとっており、バランスの乱れがトラブルを引き起こすと言われています。人体の場合も同様に、陰と陽の調和がとれていれば健康であるが、乱れると「未病」の状態となり、乱れがひどくなると本格的な病気になるというのが中国古来の考え方であると言われています。
陰と陽の見方は、生薬や食物にも当てはめることができると言われている。古代の中国人は、経験的に生薬や食物を「熱性・温性・平性・涼性・寒性」の五つの性、五性に分類し、人体の陰と陽のバランスをとるべく、体の症状や体質、環境に応じて使い分けています。「熱性・温性」に当てはまる生薬や食物は「陽」に属し「寒性・涼性」に当てはまる生薬や食物は「陰」に、「平性」はこれらの中間にあたります。特徴は次の通りです。

体の体質や体調の陰陽のバランスを知る方法に「証」という分類の方法があります。家庭で薬膳を応用する場合には、「寒証・熱証」が重要で病気の性質により分類します。見分ける特徴は次のように示されます。

証を判断した上で、寒証の人は体質とは逆の熱性、温性、平性の生薬や食物を選び、熱証の人は寒性、涼性、平性のものを選ぶ他、料理をする上で、主となる食材が寒性の時には熱性や温性の食材を組み合わせることで寒性の性質を緩和するなどの配慮ができます。

五行学説

五行学説とは「自然界が木・火・土・金・水の五つの基本要素で成り立ち、運行されている」という考え方であり、それぞれは孤立したものではなく相互に関係しています。
下の図に示すように「木が燃えて火が生まれ、火から土が、土から金属が生まれ、そこから水がわき、水か木を生む」という協力しながら循環する関係(相生関係)と、「木は土に根を張り、土は水を吸い取り、水は火を消し、火は金属を溶かし、金属の刃は木を切る」という相手に打ち克つ関係(相克関係)で密接に関係していると言われています。

このような五行の考え方は自然界のあらゆる物の他、人体や食物などにも応用されていると言います。主に次のように示すことができます。

五行は横の列で関連し合っており、薬膳において五行学説の見方を活用する場合には、「五季」「五味」「五禁」と人体や食物の関連を知っておく必要があります

春の食養生しょくようじょう

春は万物が生まれ樹木が伸びやかに成長する季節で五行の「木」にあたり、人体も活発な新陳代謝を始めます。この働きのコントロールの源が五臓でいう肝臓です。春は健康な人であっても肝臓を失調しやすいと同時に、肝臓の働きを正すのに適した季節でもあると言われています。
臓と腑は表裏の関係にあり肝臓(表)の症状は、胆嚢(裏)に出やすく、目や筋肉の機能低下や爪の状態にも影響します。また、肝臓はのびのびとしている事を好み、うつ状態を嫌う他、過度の怒りは肝臓を傷めてしまいます。逆に、これら一連の症状が現れた事で肝臓の不調に気づくこともあると言われています。
肝胆目筋怒に良い働きをしてこれらの不調の改善や予防するのに良いとされるのが五味の酸味に当てはまる生薬や食物と言われています。五味には、五臓の機能を高める働きがある反面、特定の五味の過食は他の臓腑を傷めてしまいます。五禁とは過食した際に悪い影響を与えるとされる臓腑を明らかにするもので、春の酸味の生薬や食物の過食は「水」の五禁が「酸味」とあるように腎臓はじめとする各所に悪い影響を与えると言われています。過食を防ぐために「酸味」と組み合わせるのに適しているのが「木」が打ち克つ「土」の「甘味」の生薬や食物とされています。
酸味に属する食物と、良い組み合わせとされる甘味に属する食物の主なものには次のようなものがあります。

涼性の食物もその調理の仕方で温かい性質に変わるものもあります。一般的に、「茹でる、焼く、煮る、蒸す、炒める、揚げる」の順に「温・熱」の性質が強くなると言われています。

春の薬膳を意識した献立例(分量は1人分)

日本の旬を大切にする食文化を残しつつ、全ての食物が薬としての効能をもつことを念頭に、日本に身近な食材料の中から意識的に選択し、組み合わせ調理する事で、現代的・日本的な薬膳として取り入れてみてはどうかと考えます。

参考文献
1)正岡 慧子 著 『家庭薬膳のススメ』毎日新聞社 
2)千頭 一生 著 『家庭で楽しむ薬膳料理』大陸書房 
3)成田 和子 著 『家庭でできる薬膳料理』日本文芸社 
4)秋本 由紀子 著 『からだによく効く家庭薬膳』池田書房 
5)菅沼 栄 著 『食養生・体によい食事』PHP研究社 
6)謝 敏h 著 『家庭で楽しむ薬膳薬酒』金園社 
7)星薬科大学女子寮薬膳会 偏 『薬学生が考えた薬膳』株式会社ミクス 
8)藤平 健 監修 『最新・よく効く漢方薬百科』主婦の友社 

このページのトップへ戻る

バックナンバー