田上病院耳より情報

2011年10月03日放射線被ばくについて 〜放射線室〜

1、はじめに

皆さんは放射線についてどう感じていますか?
原子爆弾や原発事故などから、危険な物だと感じていませんか?
今回、放射線診療に関する放射線について、できるだけわかりやすく説明していきます。

2、放射線とは(X線とは)

放射線とは粒子線と電磁波の総称のことで、粒子線にはα線、β線、中性子線などがあり、電磁波にはγ線、X線などがあります。 当院で使用しているのはX線のみです。
X線とは光(電磁波)の一種で、皆さんが見えている可視光線という光よりもっと波長が短くなった光です。可視光線ぐらい波長が長いと、遮光カーテンなどで遮断できたり、体の中には入り込めませんが、紫外線ぐらいだと皮ふまで入り込みシミの原因になったりします。X線はもっと波長が短く、体を通り抜けたりします。

3、放射線利用の3原則

放射線利用についてはICRP(国際放射線防護委員会)Pulb.60で『行為の正当化』『防護の最適化』『個人の線量限度』という3つの原則があります。この原則に則って診断可能な範囲で放射線被ばくを最低限に抑えています。

行為の正当化

勧告:放射線被ばくを伴う「行為」は、被ばくする個人または社会に対して、
   それによって生じる放射線障害を相殺するに十分な便益がなければならない。
説明:医師が放射線障害を考慮した上で、レントゲンなどの放射線診療が必要だと
   判断した場合にのみ行う。

防護の最適化

勧告:個人被ばく線量、被ばく人数、被ばくの可能性を、経済的要因、社会的要因を
   考慮に加えた上、合理的に達成できる限り低く抑える。
説明:照射範囲の限定、撮影条件の最適化により、被ばく量を減らすように
   努力しています。

個人の線量限度

勧告:線量限度とは線量またはリスクの合計を制限するため、設定された個人線量の
   上限値である。
説明:医療被ばくにおいては、患者の受ける利益がリスクを上回っていることが
   明確なため「線量限度」を設けていません。

4、放射線の単位

ベクレル【Bq】  放射能の単位

放射能とは、放射線を出す能力のことで、単位時間あたり出す放射線の数をいいます。
放射線を出す物質を放射性物質といい、電球でこの関係を例えると下の図の様になります。

放射線の単位
グレイ【Gy】  吸収線量の単位。

吸収線量とは組織や臓器に吸収された放射線量のこと。
単位重さあたりのエネルギー量で表します。[J/kg]=[Gy]

シーベルト【Sv】  等価線量、実効線量の単位
  • 等価線量
    放射線の種類やエネルギーの違いで組織や臓器に対する影響が異なります。
    影響の大きさを数値化したものです。
    等価線量=吸収線量×放射線の種類やエネルギーによって決められた値(放射線荷重係数)
    X線やγ線などの放射線荷重係数は1でこの場合Gy=Svで考えて大丈夫です。
  • 実効線量
    ガンや遺伝的影響の起こりやすさ(確率的影響)は、組織・臓器ごとに異なります。
    いくつかの異なった組織・臓器への異なった線量の組み合わせを確率的影響の合計として表示するために定義されたものです。
    実効線量=等価線量×ある組織・臓器ごとに放射線の影響の感じやすさ(放射線感受性)によって決められた値(組織荷重係数)
    ほとんどの場合等価線量よりも値は小さくなります。

5、自然放射線

私達は知らないうちに、世界平均で年間約2.4mSvの自然放射線を受けています。
地球外の太陽や星から一人当たり毎秒何百個という宇宙放射線(0.38mSv)を、人類すべてが年中たえず浴び続けています。地面からもウランなどから大地放射線(0.46mSv)大気中からもラドン等(1.33mSv)食べ物等(0.23mSv)の放射線を受けています。
ブラジルのガラバリでは年間8〜15mSvと比較的多く放射線を受けている地域もありますが、疫学的調査によると、ガンや白血病になる人の割合はほとんど変わりません。

自然放射線

6、Q&A

放射線を受けるとがんになると聞いたのですが大丈夫でしょうか?
日常生活においてガンによる死亡に関係するのは、自然の確率で起こりうる遺伝子の変異の他に、食生活(35%)、喫煙(30%)、ウイルス感染(10〜15%)、職業(4%)、飲酒(3%)、自然環境(3%)、環境汚染(2%)紫外線(1%)、医療と医薬品(1%)とイギリスの疫学者R.ドール氏によって試算されています。
放射線被ばくでのガンの発生はほとんど確認できないレベルで、通常の検査でがんの確率を高める線量(50〜200mSv)を超えることはまずないです。
月に一度、胸部レントゲンを撮っていますが、放射線障害はないでしょうか?
胸部レントゲン一回0.3mGy以下です。1年間12回撮影したとしておおよそ3.6mGyです。
放射線障害にはガンや白血病(確率的影響)以外に一時不妊、永久不妊、白内障、造血能低下など確定的影響というものがありますが、前記の胎児の影響を省くと最初に現れるのは男性の一時不妊で障害が現れ始める値(しきい値)は150mGyですので問題ないと言えます。
胸部レントゲンを撮りました。後日、妊娠していたことがわかりました。胎児に影響はないのでしょうか?
妊娠してから一番影響が出やすいのは妊娠初期(0週〜8週)です。100mGy未満の被ばくでは流産、形態異常、奇形、精神発達遅滞、発育遅延などの原因にはなりません。
通常の検査で100mGyを超えることはありませんので影響はないと言えます。
しかし、100mGyを超えうる下腹部のIVR※1、血管撮影、通常より長い検査時間の注腸検査などは注意が必要です。
もし、妊娠の可能性があれば放射線検査をする場合、医師に相談されて下さい。
※胸部レントゲンで胎児が受ける放射線量は0.01mGy以下
病室にポータブル装置でX線写真を撮りに来たとき、周りの人はどのくらいの距離まで離れる必要がありますか?
ポータブル装置での撮影のときは2m離れると影響がないとされています。撮影の介助等する場合で2m離れることができない場合はX線防護衣を着用する必要があります。

※1 IVR(Interventional Radiology)とは画像診断(X線透視装置、超音波、CT、MRIなど)を施行しながら、主にカテーテルテクニック、または穿刺術を利用した治療のことです。
「カテーテル治療」や「血管内治療」とも呼ばれています。

参考文献
医療被ばく説明マニュアル 監修 日本放射線公衆安全協会
医療被曝ガイドライン   編集 社団法人日本放射線技師会

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