田上病院耳より情報バックナンバー

2008年05月19日懐メロの効用 〜医事課〜

懐メロの効用

 日頃、医事課として事務的な仕事に追われている毎日なのですが、日曜当番で一息ついたある日の昼休み、テレビのスイッチを入れ、お昼のニュースに引き続き「のど自慢」という番組をなにげなく見ていると、不思議だなあ、という疑問がわき上がってきました。

 というのも、出場者はみな素人であり、男女を問わず年齢も色々。歌も新しいものもあれば、懐かしいものまであって、しかも決して上手な人ばかりとは限らないのに、それでいて客席も満杯。いったい、歌には人を引き付けるどんな魅力があるのでしょうか。知り合いが出ているから、応援に来たという人もいるでしょう。しかしそれにもまして、色々な歌をなまで見たり聞いたりできる、そんなところが魅力として長年続いているのではないでしょうか。

 私も小さいころから、祖父母や両親の影響なのか、歌番組をよく見たり聞いたりしていました。曲名はわからなくても聞き覚えのある曲は、多分かなりの数になるのではないかと思っております。

 病院には、お年寄りや年配の患者様がたくさんいらっしゃいます。私も事務職として、常日ごろ患者様に接する機会はあるのですが、たまにはもう少し、何かお役に立てることはないかと考えました。

 そこで無理を承知の上で、デイケアのスタッフの方にお願いして夏祭の日に一度だけ、懐メロを歌わせていただくことにしました。三橋美智也の「リンゴ村から」を歌い始めると、年配の患者様が表情もにこやかに一緒に体を揺らしたり、車イスの不自由な体で手拍子を取ろうと努力する姿が目に入ってくるではありませんか。ちなみに、この曲は昭和31年のヒット曲で、田舎から都会へと行ってしまい、便りも届かなくなってしまった幼ななじみの娘に想いを寄せる青年の心の内を描いているのですが、それに加えて伴奏の三味線の音色が、なんとなく物悲しく郷愁を感じさせます。

 折りしも昭和31年といえば、多くの金の卵とよばれる人たちが列車で集団就職のために都会に出て行った社会情勢がありました。患者様たちは、歌を聞いているうちに気持が何十年も若いころに戻るのではないか。懐メロにはそんな効用があると思うのですが。

 またこのような機会があれば、患者様に喜んでいただけるような心を揺さぶる懐かしのメロディを歌ってみたいと思っております。

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